しないことリスト ― pha, 2018
少し前に読んだ、pha 氏の「ゆるくても続く知の整理術」がかなりためになったので、たまたま古本屋で見つけた本書を読んでみた次第。
「ゆるくても続く知の整理術」は学習法に関する本だったのに対し、本書は「人生を楽しく、ラクに生きる」ための考え方を説いたもの。
裏表紙には、
仕事と家庭を両立して、家を買って、運動をして、流行を追って……。当たり前のことができる人はそうしたらいい。でも、いわゆる『フツー』がうまくできる人間ばかりじゃない――。
出典:「しないことリスト」, pha
とある。一見、大多数の人とは異なるパーソナリティを持ち社会に馴染めない人へ向けた本のように思えるが、フツーの人にも役立つと思う。世の中、特に日本には不条理なルールや習慣、マナーが蔓延っているので、社会のレールに乗っていながら無理をしている人が多くいるはず。そうした人々の肩の力を抜く処方箋として有用だ。
本書は「所有しないリスト」「努力しないリスト」「自分のせいにしないリスト」「期待しないリスト」の四つの章から構成され、各章の中で窮屈な世の中をラクに生きていくための tips が収録されている。
強調すべきは、これらの tips を実践しても怠惰な人間に堕ちるわけではない、ということだ。
社会が発達するにつれて、一人の人間に対する要求は量も質もエスカレートする一方だ。「あれをしなければならない」「これが出来ないとマズい」といった、一種の強迫観念にどんどん縛られる。
だけど、それは本当にやらなければならないことなのだろうか。みんながやっているから、ルールだからと、なんとなくやらなければならない気がするだけではないだろうか。
日本人は「出る杭は打たれる」という思想に強く囚われているので、おかしいと感じていても声を上げることができない。人の輪から外れることを極度に嫌悪し、恐怖する。出る杭になるまいと「かくあるべき」という不文律をむやみに追加し、世の中をますます窮屈にしていく不思議な民族だ。
この思想がある以上、革命じみた方法でこの国の考え方を変えるのは難しいと思う。だけど、無理して今の世に甘んじている人が一人でも多く本書を読んで、ラクな生き方や考え方を身につけていけば、自然とラクな世の中になっていくかもしれない。