けもけむのふらふら日記

何のとりえのない理系大学院生が活動記録を残したり、戯言を吐いたり、知ったかぶったりするよ。

ゆるくても続く知の整理術 ― pha, 2019

 

ゆるくても続く 知の整理術 (だいわ文庫)

ゆるくても続く 知の整理術 (だいわ文庫)

  • 作者:pha
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 文庫
 

日本では物事を成すとき、歯を食いしばり、苦境に耐え、泥臭い努力の末に成果を勝ち取ることを美徳とする風習がある。

著者の pha 氏は、この風習に異議を唱える。

この本で伝えたいことはただ一つ。

”一生懸命、必死でがんばっているやつよりも、なんとなく楽しみながらやっているやつの方が強い”

ということだ。

「ゆるくても続く知の整理術」, pha

僕自身、高校を卒業するまでは泥臭い努力こそ正しく、最後は真面目なヤツが勝つと信じていた。スポーツも勉強も愚直に努力し、そこそこ自慢できる領域に達したと思う。

 

だけど、大学に入ってから自分の努力が通用しなくなってきた。特に研究。一か月毎日朝から夜まで実験したからといって、成果が出ないときはとことん出ない。逆に、大した努力をしなくても呆気ないほど良い結果が出ることもある。

僕はまだ世間知らずの学生風情だけど、社会はきっと、そういう性質の仕事がほとんどなのだろう、と思う。

 

本書は、学習する際、どうすれば効率よく知識を得られるか、効率よく知識を定着できるか、学習を継続できるかという問題に対し、多くの工夫が具体的に記されている。

ただし、1日30分の勉強で東大に合格できるとか、最難関資格を取れるとか、ラクして途轍もない成果を得ることを謳うものではない。努力の仕方を工夫し、あくまで継続的に、楽しく勉強するための方法論を説く。

 

努力自体は紛れもなく、素晴らしいことだ。だけど、苦しいものでもある。どんなに苦しくても成功に結び付いたなら、それで良い。逆に、失敗に終わったなら苦しい思いをした分、精神的ダメージも大きくなる。結果、頑張り屋さんほど、潰れやすい。悲しいことに、それが現実。

 

生産性の向上が叫ばれて久しい。働き方改革とやらも行われているようだが、日本の生産性は一向に上がる気配がない。日本古来の努力について、再考する時が来ているのでは、と思う。

 

努力の仕方に目を向けるきっかけを与えてくれる、非常に有意義な一冊。