ゆるくても続く知の整理術 ― pha, 2019
日本では物事を成すとき、歯を食いしばり、苦境に耐え、泥臭い努力の末に成果を勝ち取ることを美徳とする風習がある。
著者の pha 氏は、この風習に異議を唱える。
この本で伝えたいことはただ一つ。
”一生懸命、必死でがんばっているやつよりも、なんとなく楽しみながらやっているやつの方が強い”
ということだ。
「ゆるくても続く知の整理術」, pha
僕自身、高校を卒業するまでは泥臭い努力こそ正しく、最後は真面目なヤツが勝つと信じていた。スポーツも勉強も愚直に努力し、そこそこ自慢できる領域に達したと思う。
だけど、大学に入ってから自分の努力が通用しなくなってきた。特に研究。一か月毎日朝から夜まで実験したからといって、成果が出ないときはとことん出ない。逆に、大した努力をしなくても呆気ないほど良い結果が出ることもある。
僕はまだ世間知らずの学生風情だけど、社会はきっと、そういう性質の仕事がほとんどなのだろう、と思う。
本書は、学習する際、どうすれば効率よく知識を得られるか、効率よく知識を定着できるか、学習を継続できるかという問題に対し、多くの工夫が具体的に記されている。
ただし、1日30分の勉強で東大に合格できるとか、最難関資格を取れるとか、ラクして途轍もない成果を得ることを謳うものではない。努力の仕方を工夫し、あくまで継続的に、楽しく勉強するための方法論を説く。
努力自体は紛れもなく、素晴らしいことだ。だけど、苦しいものでもある。どんなに苦しくても成功に結び付いたなら、それで良い。逆に、失敗に終わったなら苦しい思いをした分、精神的ダメージも大きくなる。結果、頑張り屋さんほど、潰れやすい。悲しいことに、それが現実。
生産性の向上が叫ばれて久しい。働き方改革とやらも行われているようだが、日本の生産性は一向に上がる気配がない。日本古来の努力について、再考する時が来ているのでは、と思う。
努力の仕方に目を向けるきっかけを与えてくれる、非常に有意義な一冊。